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主治医にとって辛い事

これまでお付き合いのあった患者さんと、その付き合いが切れるのは幾つかパターンがあります

まず一つ目。
患者さんが住所を変わるために、来れなくなる。
これは仕方ありません。
紹介状を持たせて、新しい主治医の先生に託します。
良い出会いがあれば嬉しいです。

二つ目。
患者さんが亡くなる場合。
これは淋しく辛いですが、人間はいつか亡くなるもの。
その過程に自分が患者さんの為に関われたのなら幸せです。
でも、上手く関われなかった場合は悔いが残ります。

三つ目
別の医療機関に受診されるようになったばあい。
ご無事だったと安心するとともに、自分がお役に立てなかったことに悔いが残ります。
もちろん、相性とか縁もあるでしょう。
でも、もう少し自分の方へ振り向いて貰う努力が出来なかったのか?
悔いが残ります。

四つ目
大きな病気を併発してしまい、通院が不可能になる場合。
例えば、高血圧や糖尿病で通院して居た患者さんが、心臓病や脳梗塞になり、
当院への通院が出来なくなった場合です。
これが一番悔いが残ります。

もちろん、病気になるのは、医者の能力不足だけではありません。
患者さん側の問題もあります。
でも、病気をよくする努力をあまりしなかった患者さんに、
どうしてもっと努力するように変えてあげられなかったのか。
もっと上手く誘導できなかったのか?
自分の治療法が間違っていたのか?
いつも考えてしまいます。

患者さんの心の変化と言うのがあって、
治療に対して、前向きになる時が来るまでは、ドクターが何を言ってもだめで、
ドクターの仕事は、如何に患者さんに病気に対して向き合って前向きになって貰えるようにするか、
それが唯一の仕事と言われています。
それには、病気の怖さを説明するだけで不十分でそれにプラス何かが必要なのです。

脳梗塞や心筋梗塞になって始めて、血圧や血糖値を気にする患者さんが居ます。
運良く小さな病気であれば、それがきっかけになって、食事を見直したり、タバコを辞めたり、お酒を止めたり。
病気になって良かったかもと言う考え方も出来ますが、
例え治っても大きな後遺症を残すことになると、ご本人も主治医にも悔いが残ります。
そして、そのために通院出来なくなって、患者さんにお会いすることが出来なくなれば、
主治医としてこんなに辛い事はありません。

そうならないためには、いかに患者さんにやる気になってもらえるか、
それには沢山の事をクリアしていかないといけません。
失敗する時もある、でもひとつひとつ前の山をクリアして行こうと思います。

通院して居た患者さんが最後の4つめの事情で当院へ来れなくなった、
そんな知らせを聞いて気持ちを新たにした1日でした。





by takahashi-naika | 2019-04-27 17:10 | 診療雑記

今朝の小確幸

高齢化社会が進む日本、そして徳島。
90歳以上の患者さんは大勢居ます。多くは女性ですが。
患者さんが90歳になった時に、一緒に記念写真を撮るようにしています。
プリントして差し上げると、多くの方は喜んでくれます。
私はいつも半分冗談、半分本気で言います。
「いつか、来たるべき時が来たら使ってよ」と。

その方は3年前に一緒に写真を撮りました。
今日の洋服はイマイチなので、今度着替えて着たら撮ってと言って
次回の診察時にブランド物の上着を着てこられた方でした。

今は93歳なのですが、昨年から大きく体調を崩しています。
きっかけはよく分かりません。
突然受診が無くなって、ご家族(その方も私の患者さんなので)に尋ねても
元気だから・・と言うお返事でした。色々病気があって、大事な薬も沢山あったのにと
心配していたのですが・・。

調子が悪いので往診に来てくれと依頼があってお家に伺った時には別人になっていました。
認知症も出て来たようで、私のこともよく分からない。ブツブツと独り言。
食欲が無く食べれてない、動けない。顔色悪く、手足は腫れていました。
私の事も全然わからないようでした。

お家ではどうにもならないので、入院。
退院しても、またすぐに入院。少し良くなると退院(認知症の管理が出来ないので)と言うのを
3回ほど繰り返し、お家の人も、年齢的にもう入院しても良くならない。デイサービスなどの施設も、
調子が悪そうだとすぐに帰らされたり、救急で連れて行きましょうかと言われるの困って、
相談の結果、悪くても目をつぶろう、最後の時まで出来るだけ家で看ようと言うことに落ち着きました。

退院して3回目の退院後2回目の訪問が今日でした。
行くと、ベッドから降りて床に座り、ベッドを背もたれにしていました。
お家の人が、何度も先生だよと声をかけてくれます。
介護をしてくれる息子さんの事はたまに分かるとのこと。
昨日から来ている遠くに住む娘さんのことは分かって無いとのことでした。

顔色も悪いし、血圧も低いし、あまり調子は良さそうではありません。
でも、暫くしているうちに、その患者さんは叫びました。
「わかった・・この人は私の大好きな先生じゃ〜」
そう言って私の方へ両手をさしのべてきました。そう、ハグの姿勢です。
私は思わず。思い切りハグをしてしまいました。恋人にするように、ほっぺたをすりあわせ、頭を撫でて
ありがとう、思い出してくれて・・と何度も言いました。
もともと涙腺が緩い私、年取って更にその傾向が強くなっていますが、不覚にも涙が出そうになりました。

たまたまだったのかも知れません。
電球が切れる前に、一瞬繋がるみたいに私のことを思い出してくれたのかも知れません。
次の往診の時には忘れているかも知れません。
いや、次の往診までに悪くなるかも知れません。

それでも良いのです。
こういう喜びがあるから、かかりつけ医の喜びがあるのです。

私の好きな村上春樹さんが、「小確幸」と言う言葉を使います。
小さくとも確実な幸せ・・文字通りです。
私にとっての小確幸はこういうことなのです。




by takahashi-naika | 2019-04-06 15:04 | 診療雑記

たかはし内科 院長 日々の診察雑記帳


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