台風の夜に

昨夜の台風は、久しぶりに「台風」って感じでしたね。

当院は、いつも台風の時に起こる自動ドアの下からの水の浸入に対して、ブルーシートを被せたり、内側にはバスタオルを敷いたりして対処していました。おかげでタオルが濡れる程度で、室内への水の浸入は無かったです。観葉植物の鉢が倒れて割れたのが唯一の被害でした。

皆さんのところは大丈夫だったでしょうか?
もし、被害に遭われた方が居られましたら、心よりお見舞い申し上げます。

で、夜はボウリングの試合にも行けず(実際開催されたそうですが)、前から買っておいたDVDを見ていました。
この作品です。

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これは、胃がん末期と告げられた初老の男性が、死ぬことを意識し、死ぬまでにやるべきことを考えて、淡々とそれを実行しながら死へ向かう様を、実の娘さんが撮影して映画にしたものです。
全国ロードショーで上映されたので、知っておられるかたも多いと思います。

タイトルの通り、自分の死へ向かって、やるべきことを着々とやっておこうと言うのが主題なのかも知れません。実際、このこの映画の影響か?巷ではエンディングノートなる商品が売られています。

まあ、それは大事なことなのでしょうけども、私はこの映画を別の観点から見ました。
それは、最後まで人間らしく、家族の愛に包まれながら死んでいくことが、いかに美しいかと言うことです。

最近、在宅死と言う言葉をよく使います。
当院の待合室にも「在宅死のすすめ」と言う本を置いてあります。
こういう言葉が溢れてくると、家で死ぬことが善で、病院で死ぬことが悪いように思われがちですが、果たしてそうでしょうか?

この映画の主人公は病院で最後を迎えます。抗がん剤の点滴だって受けています。
片方では、家族が用意した有機栽培のニンジンジュースもごくごくと飲みます。

最後が近づくと、長男と一緒に死後にやるべきことを確認し合い、家族に声をかけ、孫たちを抱きしめ、
自分より後に残る90歳を超えたお母さんに携帯で電話をかけてお別れを言います。
そして最後は、他の家族を外に出して、奥さんと二人きりになり、「愛しているよ」とはじめて口に出したのです。

死の病を宣告されたとき、勝てないかも知れない戦とわかって病気と闘ってみるのも悪いことではありません。でも、その一方その撤退時期を主治医とともに見つめて、死への準備をする。
家族にきちんと別れを告げながら、家族に包まれて死んでいく。
それが出来るなら、病院であろうと在宅であろうと、死ぬ場所は関係ないのだろうと思います。

確かに、病院で人間らしく死のうとしても、患者さんの自由にさせてくれない現状もあるでしょう。

この映画では、主治医のドクターが回診に来て「まだ腎臓のクレアチニンの数値は大丈夫ですよ」なんてお間抜けなことを言っていました(虎の門病院の先生ごめんなさい)。
私ならこう言うでしょう。「あなたの主治医にさせて貰って幸せでした、ありがとうございました。」
実際私は映画を見ながら心の中で叫んでいました。

しかし、患者さんが主治医とよく話し合っていけば、これからの時代は変わっていくと思います。
ホスピスじゃない、普通の病院でも患者さんが人間らしく死んでいくお手伝いをしてくれる時代が遠からず来ると信じています。

どこで死を迎えるかと言うよりは、どんな風に死を迎えるか、どんな風に死に向かう家族を送り出すのか。大事なのはそういうことだと思います。

なくなった人が戻ってくると言うお盆に、そんなことを考えるのも良い物だと思いました。
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by takahashi-naika | 2014-08-10 16:14 | 日常雑記

たかはし内科 院長 日々の診察雑記帳


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