物語を聞かせて

今日は少し真面目な話しをしましょう。
真面目で少し難しい話しです。

私たち内科医が、患者さんの病気を診断するときに、一番重きを置いているのは何だと思いますか?
血液検査の結果でしょうか?
それとも、CTやMRIの画像でしょうか?

いえ、そうではありません。
もちろん、それらはとても有用なツールには違いないのですが。
そういうもので診断できる病気は限られます。
むしろ、そう言う目に見える形では診断出来ない病気の方が多いのです。

それでは何でしょう?

私たちが一番重視しているのは、現病歴というものです。
つまり、今の病気がいつからどんな風にはじまって、どんな症状を伴いながら今に至ったか。
その間に、治療が加われば、その治療によってどんな変化をしたか?
周りの同じような人がいるかどうか?

そういうことを一番大事にします。

病気の診断には、ワンポイントではなく、時間の流れとともにいくつもポイントがあった方がわかりやすいですね。起承転結と言うやつです。

患者さんの病気が始まって、今主治医である自分の前に来るまでにどういう経過を辿ったのか?
それが現在の病気を診断するために一番大事なことだと考えています。
私だけの意見ではありません。
過去の内科の大家の先生も皆おっしゃっています。
病気の8割は病歴だけで診断出来ると。

ですから、患者さんの話を一生懸命に聞いて、時間の経過とともにそれを整理しながら自分の頭の中を整理していきます。推理小説のようなものです。
患者さんによっては、話しの時間帯が、過去に飛んだり未来に飛んだり、また事実の中に自分の感想が入って来たりする場合があります。
そういう場合は、頭を整理するのに苦労をします。

ですから、患者さんも、出来るだけわかりやすく話しを聞かせてほしい。

「今日はどうしましたか?」と医者が言う時に「風邪です」と言うと、そこで話しが終わってしまいます。
既に診断は下されて、医者の入る余地はありません。けれど、その診断が全く外れて居る場合も多々あります。

「風邪だと思うんですが?」と言うなら「ほほう、どんな症状があってそう思うのでしょうか?」と尋ねる事が出来ます。
でも、それなら「数日前から、鼻水と咳があって、熱もあるんですが」と言って頂く方が解りやすいし手間も省けますよね。

医者は常に鑑別と言う事を考えています。
風邪だなあと思っても、他の病気の可能性はないか?と言う事も考えています。

だから、私は毎日言い続けています。
貴方の物語を聞かせてください。
正確に、そして簡潔であればなお嬉しい事です。
by takahashi-naika | 2013-12-01 03:07 | 診療雑記

たかはし内科 院長 日々の診察雑記帳


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